2026年6月実施予定のAIエージェント・ストラテジスト試験(AICX協会主催)は、多肢選択式・試験時間75分・全32セクションのシラバス準拠で実施されます。本記事では、当サイトが独自に作成した 中堅都市ガス会社のお客様センター をケースとした模擬問題を5問、全解説付きで公開します。
本問題は当サイト独自作成です。AICX協会の公式ドキュメント(シラバス・公式テキスト・公式問題集・実践ワークシート)の問題・ケース・登場人物・数値・解説は 一切転載しておらず、業種・人物・数字・状況設定はすべてオリジナルです。試験本番の出題形式・問題数・出題傾向と完全一致することを保証するものではありません。本サイトでは本記事の 5問構成 は独自の設計であり、公式の出題ボリュームを示すものではない点をご了承ください。
本記事は シラバスver1.0のChapter 2〜6(業務分解/データ/組織/5Dモデル) の主要論点を1ケースで横断的に演習できるよう構成しています。公式テキスト・公式問題集(AICX協会公式サイトで販売)と併用することで、より効果的に対策が進められます。
ケース:東和ガス株式会社のお客様センター AI化プロジェクト
企業概要
東和ガス株式会社(仮想企業)は、関東地方の中堅都市ガス事業者。供給エリアは 約45万世帯 と 約1,200の法人顧客。お客様センターは本社に 18名のオペレーター(うち2名が深夜帯担当)を擁し、月間平均 7,200件 の問い合わせ対応を行っている。
問い合わせカテゴリ内訳
- 料金照会・支払関連:40%(平均対応時間 8分)
- 契約変更・引越し手続き:20%(平均対応時間 18分)
- 設備トラブル・故障受付:25%(平均対応時間 25分、うち5%が緊急エスカレ)
- 安全点検予約:10%(平均対応時間 6分)
- その他(営業時間外連絡など):5%
月間総工数は約 1,650時間。深夜・休日対応で人件費が膨らみ、ベテランの引退による戦力低下も近い。
現状の業務フロー(As-Is)
- 電話受信(9割が電話、1割がメール/問い合わせフォーム)
- オペレーターが要件をヒアリング
- 顧客IDを聞き出し、自社製CRMで契約情報を検索(複数画面遷移)
- 過去対応履歴・契約条件を確認
- 該当する社内手順書(紙+PDF混在、約180本)から探して回答
- 必要に応じて支社・現場担当に電話連携
- 通話後、CRMに対応ログを手入力(平均5分)
- 月次レポートを Excel で手集計(管理者作業 12時間/月)
特定された4つのギャップ
- 手順書の検索に平均3〜5分(料金照会では実対応より検索時間の方が長いケースも)
- 新人オペレーターの戦力化に5〜6ヶ月(ベテランとの対応品質差大)
- ベテラン依存が顕著で、桐生氏(25年勤務)退職後の懸念
- 月次集計・KPI算出が手作業で経営判断のリードタイムが長い
ステークホルダー
- 大崎(お客様センター部長):経営から「半年で人件費20%削減」の指示を受けたプロジェクトリーダー
- 久原(経営企画部長):「ROIで根拠を示せ」と試算を要求
- 三津山(情報システム部長):「セキュリティとシステム連携の整合性が取れれば技術支援する」
- 江坂(安全管理部長):「ガス漏れ等の緊急通報は絶対に人間が対応すること。AIに任せて事故が起きたら責任問題」
- 桐生(25年勤務ベテラン):「お客様の声色や言い回しから察するのが我々の仕事。AIには理解できない」
- 入野(10年勤務):「興味あるが、現場改善で手一杯。協力する余裕があるかどうか」
- 三崎(2年勤務若手):「AIで属人化を解消できるなら歓迎。新人の教育コストも下がるはず」
- 法務部門:「顧客の住所・契約情報をAIに渡すことの社内規程上の整合性確認が必要」
問1:As-Is分析・ECRS適用
東和ガスのプロジェクトリーダー大崎部長は、ECRS(Eliminate / Combine / Rearrange / Simplify)の観点で業務改善の優先順位を整理しようとしている。As-Is業務フローのうち、最初に検討すべき改善案として最も適切なものはどれか。
- A. 手順書のキーワード検索時間(3〜5分)を短縮するため、社内wikiに全手順書を移行し検索インターフェースを統一する
- B. CRM画面の遷移が多い問題に対し、関連情報を1画面に集約するUI改修プロジェクトを並行発足する
- C. 現場担当への確認電話が必要な工程について、対応マニュアル整備によりオペレーターだけで完結できる範囲を拡大する
- D. 月次レポート集計(管理者12時間/月)について、Excel手集計を排除しBIツールで自動集計に切り替える
正解:D
ECRSは「Eliminate(排除)→ Combine(結合)→ Rearrange(再配置)→ Simplify(簡略化)」の順で適用するのが鉄則。Eliminate(排除)を最優先に検討する。
D は手集計工程そのものを「排除」し自動化する案で、最もECRSの順序に合致する。月次集計は付加価値を生まない事務作業の代表例で、自動化により12時間/月をそのまま削減できる。
A は Simplify(検索の簡略化)、B は Combine(情報の結合)、C は Rearrange(業務範囲の再配置)。いずれも価値ある改善だが、「そもそも不要な作業を消す」発想が抜けている。試験では「効率化」よりも「排除可能性」を先に考える視点が問われる。
問2:データ設計・RAG向け情報構造化
桐生(ベテラン)が長年蓄積してきた「お客様の言い回しから真の要件を察する」ノウハウを、AIエージェントに引き継がせるための情報設計として、最も適切な最初のアプローチはどれか。
- A. 桐生氏に過去5年分の通話録音を提出してもらい、音声解析AIで自動的にパターン抽出する
- B. 桐生氏の対応事例を3〜5名の中堅オペレーターが定型形式(顧客発言例 → 想定要件 → 対応手順)でドキュメント化し、RAGの一次知識ベースとする
- C. 桐生氏の経験を抽象化したFAQを作成し、オペレーター全員で共有する
- D. 桐生氏に直接AIエージェントの教師データを作成してもらう
正解:B
暗黙知を扱う際は「第三者が再現可能な形に構造化する」のが第一歩。
B は「中堅オペレーターによる構造化」を経るため、(1) 桐生氏の負担を最小化、(2) 抽出される情報が 実務的に使える定型形式 に整理される、(3) RAG向けの 一次知識ベース として直接活用できる、という3点で最適。
A は通話録音から自動抽出する案だが、音声品質・個人情報・表現多様性の問題で、初期段階での精度確保が困難。C はFAQ化止まりで、AIエージェントが活用できる構造化データになっていない。D は桐生氏の本業に支障が出るうえ、AI教師データ作成は別スキル。
ストラテジストとして、「誰が・どのフォーマットで・どこに格納するか」をセットで設計する発想が問われる。
問3:デリゲーション設計
東和ガスの問い合わせカテゴリと、AIエージェント/HITL(人間承認)/人間担当の役割分担として 最も適切な組み合わせ はどれか。
| カテゴリ | 案A | 案B | 案C | 案D |
|---|---|---|---|---|
| 料金照会 | AI完全自動 | AI回答→人間承認 | AI完全自動 | AI回答→人間承認 |
| 契約変更 | AI完全自動 | AI回答→人間承認 | AI回答→人間承認 | AI完全自動 |
| 設備トラブル(通常) | AI回答→人間承認 | AI回答→人間承認 | AI要約→人間判断 | AI回答→人間承認 |
| 設備トラブル(緊急ガス漏れ等) | AI判断・通報受付 | AI回答→人間承認 | 全件人間直接対応 | AI判断・通報受付 |
| 安全点検予約 | AI完全自動 | AI完全自動 | AI完全自動 | AI完全自動 |
正解:C
デリゲーション設計の原則は「ルール明確+繰り返し → AI、例外・文脈依存 → 人間、誤りリスク高 → HITL」。さらに本ケースでは江坂安全管理部長から「ガス漏れ等の緊急通報は絶対に人間が対応」という絶対要件が明示されている。
案 C は:
- 料金照会・安全点検予約:構造化データで判断可能 → AI完全自動
- 契約変更:個人情報を含み誤りが顧客に直接影響 → HITL(人間承認)
- 設備トラブル(通常):文脈読み取りが必要 → AI要約+人間判断
- 設備トラブル(緊急ガス漏れ):全件人間直接対応 ← 安全管理部の絶対要件を満たす
A は緊急通報をAIに任せている時点でアウト。B/D も同様。ステークホルダーの絶対要件を見落とさない判断力 が問われる典型問題。
問4:MVP定義
大崎部長は経営から「3ヶ月でPoC結果を持って来い」と指示されている。MVP(Minimum Viable Product)として最初に着手するスコープとして 最も適切なもの はどれか。
- A. 全カテゴリ(料金・契約・トラブル・点検予約)を対象に、簡易プロトタイプを並行構築し、3ヶ月後に全体像を提示する
- B. 件数最多かつ判断ロジックが単純な「料金照会」(40%)に絞り、AI完全自動応答を構築・実運用検証する
- C. 経営インパクトが最大の「設備トラブル」(25%、平均25分)を対象に、AI要約と人間判断のフローを構築する
- D. 全カテゴリ横断で適用可能な共通RAG基盤を先に構築し、その上に各カテゴリの応答ロジックを順次追加する
正解:B
MVPの定義は「最小限の機能で価値仮説を検証できる構成」。3ヶ月という制約下では、範囲の絞り込み が成功の決定要因となる。
B は:
- 件数最多(40%) = 削減効果のインパクトが大きい
- 判断ロジック単純 = 構築期間内に動かせる蓋然性が高い
- 完全自動応答 = AIの効果が定量的に示せる(ROI試算しやすい)
A はスコープ過大で「3ヶ月で何も完成しない」リスク。C は緊急通報を含む(江坂部長の要求と矛盾しない構成にできるが、複雑度が高くMVP不向き)。D は基盤先行で「PoCの成果が見えない」失敗パターンの典型。
「仮説検証に必要な最小範囲は何か」をストラテジストが定義することが問われる。
問5:チェンジマネジメント
桐生(25年ベテラン、AI懐疑派)、入野(10年中堅、中立)、三崎(2年若手、AI推進派)の3名に対し、現場でのプロジェクト推進体制として 最も適切な役割設計 はどれか。
- A. 三崎を実務リーダーに任命してプロジェクトを高速化、桐生・入野は外野で意見聴取するに留める
- B. 桐生をプロジェクトオーナーに据えてベテラン視点で品質保証を担わせ、三崎は実装支援に回す
- C. 桐生に「ナレッジ提供者」、入野に「現場運用設計者」、三崎に「PoC利用フィードバック担当」と段階的に役割を割り振る
- D. 全員等しくプロジェクトメンバーとし、定期会議で意思決定を多数決で進める
正解:C
チェンジマネジメントの基本は「温度差のあるステークホルダーに、それぞれの動機・専門性に合った役割を割り当てる」こと。
C は:
- 桐生(懐疑派・ベテラン) →「あなたのノウハウを正しく次世代に継承する」という大義名分を与える「ナレッジ提供者」役。否定派を「貢献者」に変える設計
- 入野(中立・中堅) → 現場と仕組みの両方が分かる立ち位置を活かし「運用設計者」役で巻き込む
- 三崎(推進派・若手) → 利用者目線でのフィードバックという、若手だからこそ価値がある役割
A は推進派を持ち上げて反対派を疎外する典型的な失敗パターン(後で組織内対立に発展)。B は逆に懐疑派をリーダーに据えてプロジェクトが停滞するリスク。D は意思決定速度が落ち、PoCの3ヶ月期限を守れない。
「反対派を排除せず、貢献できる位置に置く」というチェンジマネジメントの王道が問われる。
まとめ:5問を通して問われた論点
- ECRSは「E→C→R→S」の順。効率化より排除可能性を先に考える
- 暗黙知は「構造化フォーマット」を介してRAGに渡す。誰が・どのフォーマットで・どこに格納するかをセットで設計
- デリゲーションはステークホルダーの絶対要件を踏まえて設計。安全・法務・コンプライアンスは妥協不可
- MVPは「最大インパクト×最小工数」で範囲絞り。基盤先行・全カテゴリ並行は失敗パターン
- チェンジマネジメントは「温度差を役割に変換」。反対派こそ貢献できるポジションを設計する
これらの論点は 業種を変えても繰り返し問われる 構造です。当サイトでは今後、製造業・金融・小売・医療・SaaS など業種別の予想問題を順次公開していきます。
注意事項:本記事は当サイトの独自分析と作問に基づく予想問題です。AICX協会の公式ドキュメントの内容は一切転載していません。試験本番の出題内容・出題ボリュームを保証するものではなく、あくまで対策の一助としてご活用ください。最新の試験要綱・公式教材の販売状況は AICX協会公式サイト でご確認ください。

